「オトナの歌謡曲」第二十二回 バラが咲いた

「バラが咲いた」
作詞・作曲 浜口庫之助
歌 マイク真木(1966年4月フィリップス/ビクター)



この曲で、僕はハマクラさんの名前を知りました。まだ幼稚園に上がる前、業界紙の編集長だった父親は、ほとんど帰宅は午前様。高度成長のまっただなかで、夜な夜な銀座のバーやクラブに行っていたものと思われます。で、朝とか日曜日とか、家にいるときに、上着のポケットから、(お土産と称する)チョコレートやガムをくれるのですが、よく歌の歌詞を書いたメモも一緒に出て来ました。

小さい紙に、綺麗な文字で歌詞が書いてある。その時、流行している歌、これから流行しそうな曲の歌詞を、ホステスさんに書いてもらったのでしょう。それをみながら、気に入った歌を、あまり上手とはいえない調子で歌う。で、そのなかで、なんとなく心に残っているもののレコードを後で買ってくる。みたいな、感じで、我が家にも流行歌が浸透していく、という寸法でした。

で、この「バラが咲いた」もそうした曲の一つです。父が「この歌を作ったハマクラさんと飲んで」みたいなことを、それこそ自慢げにいつも言うので、ハマクラさん=「バラが咲いた」という刷り込みがありました。

というわけで「バラが咲いた」です。これが大衆に浸透した「フォーク」でした。シングルのジャケットに「日本のモダン・フォークがうまれた!」のキャッチが踊っています。

さて、マイク真木さんは、昭和38(1963)年、日本大学在学中にモダン・フォーク・カルテットを結成。MFQといっても、あのアメリカのTHE MODERN FOLK QUARTETではありません。で、初のソロとしてリリースしたのが、ハマクラさんの「バラが咲いた」でした。この曲、日本のフォークソング第一号として、今では知られていますが、「これはフォークではない!」と当時、物議をかもしたことがあります。流行曲を書いているハマクラさんが書いたもので、商業曲で、フォークの精神性がないから、云々、といったことが熱く議論されたと、あるミュージシャンから伺ったことがあります。

で、この「バラが咲いた」ですが、もともとは、別な方が歌う予定で企画されたものです。マイクさんがデモ用の仮歌ということで、歌われたところ、ハマクラさんが「彼がいい」ということで、マイク真木さんのデビュー曲となりました。しかも、洋楽のレーベル、フィリップスの邦楽としてのリリースです(ビクターのフィリップス事業部が邦楽を始めたのが1966年です)。フォークシンガーのマイクさんが歌う、ハマクラさんの流行歌=「日本のフォーク」第一号という図式は、実は、歌謡曲の流行するセオリーでもあります。大衆にとって大事なのは「あ、これがフォークというものなのか」と、分かり易さでもあります(ビートルズは英語だからわからないけど、GSはカッコイイ、というようなロジックは一見乱暴ですけど、それが大衆化のカギでもあるわけです)。

http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND13008/index.html

この歌詞、イイですよね。シンプルで。続く「花と小父さん」と二部作をなす、「孤独な心を癒してくれる美しい花」というコンセプトです。「寂しかった僕の庭が明るくなった」というフレーズは、「真っ赤なバラ」がこの主人公にもたらしてくれたモノを、リスナーに共感させてくれます。この「バラ」は「子供」「恋人」「ともだち」「若さ」など、さまざまな言葉に置き換えることができます。そしてギターのイントロの優しさ! これがハマクラさんのサウンドなのです。

この歌、その後、幼稚園でも小学校でも、みんなで歌いました。授業だったり、遠足だったり、普段、遊んでいるときだったり。この曲の分かり易さ、リリカルさ、儚さ、暖かさ。すべてハマクラさんの世界だったと気づくのは、中学生ぐらいになってから、でしたが、この曲を聴くたびに、まだ小さかった頃の、匂いや、空気、温度、楽しかったこと、悲しかったこと、些細なことが、次々と浮かんできます。

この歌が流行した昭和41(1966)年、TBS系で「ウルトラQ」、続いて「ウルトラマン」が放映され、空前の怪獣ブームが到来します。余談ですが、聞けば、マイク真木さん、この「バラが咲いた」がヒットする直前、円谷プロに入って特撮スタッフになろうと真剣に考えていたことがあるそうです。もし、「バラが咲いた」を別な方が歌ってヒットしていたら、特技監督・マイク真木が誕生して、後の特撮地図が塗り変わっていたのかもしれません(笑)

さて、マイク真木さんといえば、1971(昭和46)年、「帰ってきたウルトラマン」が始まる頃、モービル石油のCMソング「気楽にいこう」を歌って、一世を風靡するわけです。このCM、モップスの鈴木ヒロミツさんが出ておられるのですが、作詞・作曲・歌はマイク真木さんです。



「バラが咲いた」から5年、ウルトラマンも帰ってきた年のヒット曲です。

というわけで、マイク真木さんというと、ハマクラさん、ウルトラマンという連想が湧くのは、僕だけかもしれませんが(笑)

これもまた「スタンダードナンバー~オトナの歌謡曲~」で歌われる予定です。

https://ticket.kyodotokyo.com/jigyo.do?jigyoBango=9Y27&unitCode=671

日本のポップスを確立した3人の作曲家、
中村八大・いずみたく・浜口庫之助の
名曲を歌い継ぐコンサート。

2009年11月24日(火)新宿文化センター大ホール
開場18:00 開演:18:30

出演:由紀さおり/遊佐未森/今野英明/バンバンバザール/土岐麻子/羊毛とおはな/中山うり/藤澤ノリマサ/中村中/阿部芙蓉美
演奏:鈴木総一朗
総合司会:柿木央久
画像

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