神保町シアター『喜劇 駅前漫画』(1966年佐伯幸三)

1966.04.28 喜劇 駅前漫画

いゃあ、ニュープリントです。絵も音も新品。未ソフト化なので、それだけでも価値あるとおもいます。この映画、谷口千吉監督の『奇巌城の冒険』の併映作ですので、子供観客を意識した駅前です。空前のマンガブーム、オバQブーム、おそ松くんブームのなか、企画されたものです。この駅前漫画のオファーがあったとき、淡島千景さんは、「おばけなんて」と断ったと、教えてくれました。だから、お景ちゃん不在の珍しい駅前でもあります。そのかわり、かつてのフランキーさんの相棒、ブーちゃんこと市村俊幸さんが、少年誌の編集長役で登場します。

駅前シリーズとしては、オハナシも練れていないし、子供向けなので下ネタもなく猥雑さもない。でも、漫画ブームを背景にしている分、興趣が湧くし、なんたって森繁久彌さん(売れない画家・明らかに谷内六郎さんの画風・笑)、伴淳三郎さん(玩具工場のオヤジ・オバQ玩具で一山あてる、成功者・笑)、三木のり平さん(玩具の下請け・相変わらずの軽薄さ・笑)の三人のやりとりが最高におかしいです。ほとんど段取りだけで、三人が会話をする場面のアドリブは、ライブ感があって最高です。森繁さんの家の茶の間で、池内淳子さんのお汁粉やさんの壁画をどういうデザインにするか? の談義をする場面なのですが、三木のり平さんのボケ方は尋常ではありません。

で、森繁さんはいつもの押しの強い、好色なオヤジではなくて、ポエトリーな世界に住む、心優しき貧乏画家で、しかもシャイ、という設定。モジモジしたりして、イレギュラーな感じが、また味になっています。

で、フランキー堺さんが実質的なメインで、今回は「サカイ漫画工房」を率いる売れっ子漫画家。アシスタントは黒柳徹子さん、横山道代さん、松山英太郎さん。作り手は(というより時代でしょうけど)漫画というものの捉え方を間違えておられるようで、漫画家=奇妙な生活をしているマンガのような人、という造形に徹していて、それが、アチャラカ映画としての楽しさを増しています。

だから、この映画のフランキーさんは『牛乳屋フランキー』『フランキーの宇宙人』などのナンセンス喜劇の世界の住人です。彼の苦手な食べ物をめぐるギャグのリフレインは、笑いを誘発して、バカバカしいと思いつつ、楽しくて仕方ありません(笑)

で、この映画のメインディッシュは、やはり「オバケのQ太郎」と「おそ松くん」です。伴淳さんの息子に「飛び出せ!青春」の木次くんこと頭子佳孝さんが演じていて、その名もQ太郎。オバQに夢中の男の子です。そしてのり平さんの息子に、「コメットさん」でおなじみの蔵忠芳さん、彼の名は「おそ松くん」フリークのおと松くん(笑)

当時「オバケのQ太郎」を作っていた東京ムービーによる、Qちゃんと伴淳さんの共演場面は、『メリーポピンズ』同様のインパクトがあります。しかもカラー、ワイドです! そこに広瀬健次郎先生のあのBGMが勇ましく流れます。もうワンチャンス、オバQが登場する場面は、実写なのですが、そこで『日本誕生』の伊福部サウンドも流れます。ああ、幸せ(笑) しかもQちゃんの声は曽我町子さん、P子は水垣洋子さんが声をあてておられます。

さらに、個人的に大ヒットなのが、この映画の悪役「井矢見太郎」を演じている山茶花究さんでしょう。昨日のトークで、イヤミのモデルのトニー谷さんの話を高平哲郎さんがされてましたが、山茶花さんのイヤミも駅前らしくて宜しいです。

というわけで、この映画、喜劇として、映画としての完成度よりも、1966年のオバQブームを切り取った風俗映画として、実に貴重かつ、楽しい映画になっています。で、駅前はどこ? という質問をよく受けるのですが、今回、ワンカットだけ駅名が登場するシーンがあります。松山英太郎さんが100円札をおっかけるシーンの背後に写るのがO線のY駅の入口でした。

それから風呂屋さんのシーンで、映画のポスターを貼ってあるのを見るのが僕は愉しみなのですが、今回は「下北沢オデオン座」で『素晴らしきヒコーキ野郎』『王様と私』『フィフィ大空をゆく』上映の案内です。大画面で見ると、次週には、なんと、僕のブログの題名でもある、プレスリーの「いかすぜ!この恋」が予定されているなんて!

もう一回風呂屋さんのポスターが出て来る場面がありますが、こちらは1966年の東宝の海外ロケ作品の案内ポスターでした。ヨーロッパ『アルプスの若大将』、中近東『奇巌城の冒険』、南米『アンデスの花嫁』、東南アジア『バンコックの夜』とあります。そんなディティールも、プログラムピクチャーの愉しみではあります(笑)
画像

オバケのQ太郎 1 (藤子・F・不二雄大全集)
小学館
藤子・F・不二雄

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