神保町シアター『腰抜け二刀流』(50年並木鏡太郎)

1950.09.26 腰抜け二刀流  佐藤プロ

神保町シアター「喜劇映画パラダイス」第二週に入りました。土曜日、お茶の水で午後から打ち合せがあったので、ツィッターで予告した通り、5時45分からの『腰抜け二刀流』を観てきました。ちょうど、劇場から「何か展示物を」という要請もあったので、『カックン超特急』と『金語楼の三等兵』のスピードポスターと、『腰抜け二刀流』の台本持参で行きました。

いやぁ、結構な入りで、嬉しい嬉しい。この映画、ご存知のように、森繁久彌さんとしては『女優』に次ぐ二本目の作品でありますが、こちらは初主演作。

この映画について、昨年書いた森繁さんについての原稿から引用します。

 敗戦後、ソ連に抑留され、昭和21(1946)年に家族と引き揚げる。東宝の菊田一夫のバックアップで、映画にデビューするのが昭和22(1947)年、衣笠貞之助の『女優』の端役だった。
 この時なんと33歳! 女房もあれば子供もいる。映画デビューが30代半ば前というのがオロドキだが、そこからの快進撃がスゴかった。「新宿ムーランルージュ」でアドリブを連発、新進コメディアンとして頭角をあらわし、NHKラジオ「愉快な仲間」での藤山一郎との掛け合いは、ビング・クロスビーとボブ・ホープもかくやの洒脱さで、昭和25(1950)年には、新東宝で初主演映画『腰抜け二刀流』が作られる。もくろみ通り“ボブ・ホープの線”で出世を果たす。(引用終わり)

というわけで、遅咲きの花の森繁さんとしては「勝負」の映画だったわけです。同時に、映画の新人・森繁久彌を、新東宝がどう売り出そうとしたか? も興味深いところです。まずヒロインは、戦前からの名花・轟夕起子さん、そして、ベテラン岸井明さん、清川虹子さん、さらにワンシーン出演(でも要の)花菱アチャコさんを配して、アチャラカ映画としてのキャストを揃えます。しかも脚本は、あの山中貞雄監督や稲垣浩監督作を支えたベテランの三村伸太郎さんです。新東宝シナリオ塾で舛田利雄監督を育てた方でもあります。

戦時中には
1943.07.15 名人長次彫  東宝  エンタツ・アチャコ
1944.01.14 韋駄天街道  東宝  エノケン
1944.07.06 三尺左吾平  東宝 エノケン

戦後は
1948.07.13 唄まつり百万両  新東宝 斎藤寅次郎監督

といった、喜劇人出演の時局時代劇や、アチャラカ喜劇の脚本も書いています。が、才人だけにドラマの骨子がしっかりしています。グダグダ感はないのです。『腰抜け二挺拳銃』にあやかったとはいえ、いや、あやかったからこそ、ちゃんとしたものをという、佐藤武プロデューサー(1938年『チョコレートと兵隊』で、松竹から東宝に移籍した監督でもあります)のスタンスがこの映画を、現在でもイケる作品にしていると、実感しました。

だから、監督が時代劇の中堅、並木鏡太郎さんでもイケるのです(失礼!)タイトルバックが終わり、轟夕起子さんが女将の飲み屋にキャメラが入っていくのですが、その入口が、一見、引き戸に見えて、実はスイングドアという「西部劇」を意識した演出で、「なんでもあり」の世界を観客に提示するわけです。で、流れてくるイントロは、どう聞いても『腰抜け二挺拳銃』の主題歌「ボタンとリボン」を思わせます。西部の酒場女、いや、ジェーン・ラッセルばりに鉄火な雰囲気をたたえて、轟夕起子さんが歌い出すのは、明らかに「ボタンとリボン」風のメロディ。例えていうならば、タモリさんの「昭和歌謡史」の(スーダラ節ならぬ)「セーケメ節」のような、パロディソングともとれます。

が、パロディではなく、この場合「真似」でしょう。本家から叱られない程度のツイストを利かしています。これが結果、パロディになるわけですが、当時はおそらく「真似」だったのだと思います。

で、いろいろあって、宮本武蔵(之助と小さい字で書いてある )ノボリを立てて、居合い抜きのがまの油売りならぬ、インチキ歯痛薬を売る、大道商人の森繁さんが出てくるわけです。本家『腰抜け二挺拳銃』でのボブ・ホープさんの仕事は歯医者さんでしたが、ここではインチキ歯痛薬売りというのがイイです。

あとは、これから映画をご覧になられる方のお楽しみとしますが、その「ボタンとリボン」風の主題歌「腰抜け二刀流」を唄う、轟さんと森繁さんのヴィジュアルは、完璧に、この映像のパロディとなるわけです(笑)



森繁さんは手風琴ではなく、手提灯でしたが(笑)

このyoutubeの映像には、続篇『腰抜け二挺拳銃の息子』の「ボタンとリボン」のロイ・ロジャースさんの場面も引き続きありますが、この続篇でのジェーン・ラッセルさんの衣裳をよく覚えておいてください。その足で『バリ島珍道中』をお持ちの方は、ぜひラストシーンをご覧ください。「パロディってこういうこと」ということを実感できると思います(笑)

さて、話は脱線しましたが、この『腰抜け二刀流』には、もう一つのお楽しみ、着ぐるみモンスターが登場します。いやぁ、怪獣好きにはたまりませんよ。ディティールについては、神保町シアターでの上映が終った後に、また続篇として書かせていただこうと思います。

というわけで、『腰抜け二刀流』スケジュールです。
http://movie.walkerplus.com/th368/sc69711.html

お好きな方はぜひ!

そして、
23日(日)の夜、神保町シアターでトークします。
瀬川昌治監督、高平哲郎さんとの「喜劇映画談義」。『喜劇役者たち 九八とゲイブル』(78年松竹)の裏話にはじまり、タモリさんのお話、赤塚不二夫先生のお話、そして昭和の爆笑王たちのあれやこれやのお話を伺えればと思っております。さらには、新東宝アチャラカ喜劇、松竹喜劇などの「映画の喜劇とその時代」などに話が及ぶかもしれません!

公式サイトからのコピペです。

5月23日(日)瀬川昌治監督トークイベント開催のお知らせ

「喜劇映画パラダイス」を記念しまして、下記の日程でトークイベントを開催します。ゲストに『喜劇役者たち 九八とゲイブル』の瀬川昌治監督と、同作品でギャグ構成を担当した「面白グループ」の一人、高平哲郎さんを迎え、本特集の企画構成・解説の佐藤利明さんをホストにお話を伺います。

日時:5月23日(日)17:45~『喜劇役者たち 九八とゲイブル』上映終了後
ゲスト:瀬川昌治監督、高平哲郎さん(編集・演出家)
司会:佐藤利明さん(娯楽映画研究家)

なお、満席の場合は入場をお断りすることがございます。ご了承ください。

http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/program/coming.html

http://www.cinematoday.jp/page/N0024261?g_ref=twitter

http://mini-theater.com/?p=4186#more-4186
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