井上梅次監督

 井上梅次監督がお亡くなりになったとのこと。突然の訃報で、本当に驚いております。

http://www.jiji.com/jc/c?g=obt_30&k=2010021500746


 初めて井上監督にお目にかかったのは、今から二十年ほど前のことです。『嵐を呼ぶ男』(57年日活)の監督とお話が出来るなんて! とその日の興奮は忘れられません。15年前には、キネ旬で「娯楽の達人 井上梅次監督」という原稿を書かせていただき、東宝のLD「東宝ゴクラク座」で『嵐を呼ぶ楽団』(60年宝塚映画)のソフト化の際に、ロングインタビューをライナーに掲載させていただきました。

 その頃、大井武蔵野館で『嵐を呼ぶ楽団』上映時には、井上監督、音楽の多忠修さんとトークをさせていただき、それから長い長いおつきあいとなりました。『黒蜥蜴』(62年大映)上映の時もトークのお相手をさせていただきました。忘れられないのが、『嵐を呼ぶ楽団』LDが出来上がったときに、東宝の担当者と一緒にお宅に初めてお邪魔したことです。LDプレイヤーを設置させていただいて、一緒に作品を拝見しました。お宅のビデオ棚には、ご自身の作品の9割がズラリと並んでおり、壮観でした。書庫には、ハヤカワのポケミスが揃っていて、傑作『死の十字路』(56年日活)など、井上監督のミステリーのバックボーンを知る思いでした。


 或る時、監督に「一緒にいらっしゃい」と、監督協会のパーティに列席したことがあります。そこで、舛田利雄監督、深作欣二監督はじめ、そうそうたる監督にご紹介いただいて、またもや大興奮の夜となりました。

 ご自身がお持ちのフィルムを、フィルムセンターに寄贈するときには、オブザーバーとしてご一緒させていただきました。フィルムセンターでの『緑はるかに』コニカラー再現上映のときには、監督とご一緒させていただき、同席してくださる予定だった浅丘ルリ子さんが、『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(95年松竹)の撮影スケジュールが変更になり欠席され、上映後の食事が監督と二人でだけになってしまったこと・・・など、走馬灯のように思い出されます。

 僕の井上梅次監督のミュージカル映画論は、メディアファクトリー刊「唄えば天国ニッポン歌謡映画デラックス 天の巻」(1999年)に「井上梅次の嵐を呼ぶシネミュージカル」として書かせていただきました。この本が出た頃、第一回の金浦映画祭(後の秋田コメディ映画祭)のゲストに、主催者から頼まれて、監督においでいただいた時は、東京から秋田への飛行機から随行させていただきました。その時は、僕がキネ旬に書いた『踊りたい夜』(63年松竹)の上映と、トークだったのですが、フィルムの順番がバラバラで、しかもフィルムが途切れて、会場の映画館、金浦・港座のステージで、温厚な監督が厳しい表情をされたことも、忘れられません。その時は、宿も同室で、蒲団を並べて、映画の話をさせていただいたこと、昨日のように覚えています。

 東京国際映画祭で『踊りたい夜』の香港リメイク作品『香江花月夜 Hong Kong Nocturne』(67年ショウブラザース)が上映されることになり、ステージでのシンポジウムの進行を仰せつかりました。井上監督、そして『大酔侠』のチェン・ペイペイさんとお嬢さんと、通訳を交えながらトークをさせていただきました。その夜の、監督、ペイペイさんたちと楽しい夕食を過ごさせていただき、この仕事に就いて良かったなぁ、としみじみ思いました。

 その後、日活のDVD『勝利者』(57年日活)の映像特典インタビューでは、お宅にカメラクルーを率いてお邪魔し、裕次郎さんについて、日活時代について、タップリとお話を伺いました。この時の模様は、今でもレンタル等で観ることができます。

 監督にお目にかかるのは、ご自宅か、銀座のオフィスのあったビルの1Fにある「ルナ」という喫茶店でした。もちろんオーナーは監督で、店名は奥様の月丘夢路さんの「月」にちなんだネーミングです。

「あ、佐藤さん。監督の井上です」と、何かあったら、気さくにご連絡をいただいて、いつも恐縮していました。折りをみて、116本、全作についてのロングインタビューを敢行できれば、と思いつつ、それが叶わぬことになったのが、とても残念です。


 井上監督は新東宝の『恋の応援団長』でデビュー以来、新東宝、日活、東宝、大映、東映、松竹の邦画各社はもちろん、香港のショウブラザースでも数々の作品を撮られました。そのいずれもが「娯楽映画」です。徹底したサービス精神で、大衆の喜ぶ映画、下駄履きのお客さんがひととき、憂さを忘れるような、そんな映画を撮ることをモットーとされました。そうしたサービス精神に基づく、ケレンは、日本映画黄金時代のプログラムピクチャーにおいて、井上イズムとなりました。それがそのまま、テレビの「土曜ワイド劇場」の嚆矢となった、天知茂さんの「明智小五郎シリーズ」にも受け継がれていくことになります。

 思い出すままに、井上監督とのことを綴ってきましたが、監督から伺ったこと、これから一つ一つ、思い出しながら、娯楽映画研究家として、何かをしなければならない。そう、思っております。

井上梅次監督のご冥福をお祈り申し上げます。


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