森繁久彌 我がセンチメンタルの碑

今、森繁久彌さんが1977年5月25日に発表したアルバム「我がセンチメンタルの碑」(フォノグラム)について原稿を書くために、繰り返し、繰り返し聞いております。

このアルバムは「わが命の火」「青春片々」「飄々流転」「静かなる鎮魂の詩」という四つのパートに別れている、詩の朗読、歌、音楽で構成された名アルバムです。萩原朔太郎、中原中也、種田山頭火、佐藤春夫の詩で構成された「わが命の火」を聞くだけでノックアウトです。そして古き良き青春を思う寮歌や「銀座の雀」「オホーツクの舟唄」などの森繁節で構成された「青春片々」に、モリシゲさんのインテリズムとノスタルジーを感じます。

で、やっぱり実体験のすごさ、に裏打ちされている、このアルバムの白眉が満州、ロシアの大地に思いを馳せ、戦争体験、引揚者の辛苦などなどが走馬灯のように蘇る「飄々流転」でしょう。ソ連映画『人生案内』の主題歌「サラベイ」や、関東軍報道部長だった長谷川宇一さんの遺稿集「シベリヤに慮われて」に続いて、辛くも懐かしい「満州里小唄」を歌うあたりなんざ、もうダメです。構成の妙にノックアウトです。

最後の「静かなる鎮魂の詩」は、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」、フォスターの「オールドブラックジョー」、シチリア民謡の「大砲としゃれこうべ」と、各国、各時代の反戦詩、唄で綴っていきます。そこに漂う無常観。松林和尚さんの『連合艦隊』で森繁さんが演じることになる、銃後の父の無念を感じます。

というわけで、CDで久しく廃盤になっている名盤です。映画俳優、舞台俳優、そして歌手、文人、さまざまな顔を持っていた森繁さんのすべてのエッセンスが凝縮された濃密なアルバムです。このアルバムがあって、あのNHKビッグショー「森繁久彌 誰か戸を叩く」(77年9月放送)があるのですね。
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