クリント・イーストウッドが語る ワーナー映画の歴史

 10月7日に、タワーレコード30周年記念として、リリースされるワーナーホームビデオのDVD「クリント・イーストウッドが語る ワーナー映画の歴史」の監修とブックレットの執筆させていただきました。

http://www.towerrecords.co.jp/sitemap/CSfCardMain.jsp?GOODS_NO=1973735&GOODS_SORT_CD=103

ブックレットには収録されていない書き下ろしの原稿で、この2枚組DVDのご紹介をさせていただきます。なお、ブックレットはタワー限定のボックス仕様のみの付録となりますので、お早めに!

“You Must Remember This: The Warner Bros. Story”は、ワーナー・ブラザースの創設から現代まで、85年に渡る足跡を、数々の証言と名場面で綴りながら辿るドキュメンタリー。アメリカでは2008年9月24、25、26日の三日間、夜9時からPBSで放送された5時間に及ぶ大作。製作はLoracプロダクションとワーナー・ブラザース。映画評論家でフィルムメーカーでもあるリチャード・シッケルが製作、構成、演出を手がけ、クリント・イーストウッドがエグゼクティブ・プロデューサーとナレーションを兼任。アメリカでは、ワーナー創設85周年を記念して、放送メディア、出版、そしてDVDソフトと様々なメディアで展開された一大プロジェクトとして大きな話題となった。

 タイトルの“You Must Remember This” は、ご存知のように、1940年代のワーナー・ブラザースを象徴する名作『カサブランカ』(1942年・マイケル・カーティズ)の主題歌”As Time Goes By(時の過ぎゆくまま)”にちなんだもの。ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマン、かつて恋人だった二人の、平和だったパリの思い出の曲として、効果的に流れる名曲で、AFI(アメリカ映画協会)が2004年に発表した「映画主題歌ベスト100」の堂々2位に輝いた、最も有名な映画主題歌でもある。

 今や世界を代表するフィルムメーカーとなり、常に新作を発表し続けている、我らがクリント・イーストウッドだが、ワーナー・スタジオで本格的に映画に取り組んだのが、1971年の『ダーティハリー』だった。その経緯については本編に詳しいが、ここから現在までのワーナーとイーストウッドの長い付き合いが始まった。

 1975年、ワーナー撮影所の中に設けられた、小さなスペイン風の建物だったイーストウッドのプロダクションが、33年後の2008年には、かつて脚本家たちが名作を執筆した建物で、新たな映画を製作し続けている。今はガーデンとなったテニスコートの脇にあるこの建物からは、ジャック・L・ワーナーが、その鋭い“鷹の眼”のような眼光で睨みを利かせていた部屋の窓が見えるという。

 イーストウッドは、1970年代の「ダーティハリー」シリーズはじめ、日米双方の側から描いた渾身の戦争大作『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』(2006年)、そして2009年に日本でも大きな話題となった『グラン・トリノ』(2008年)などの名作を、ワーナー・ブラザースとのパートナーシップで世に送り出してきた。その作風には、ワーナー映画が築き上げてきた、スタジオのカラーが通底している。

 マーティン・スコセッシもまた、ワーナー映画の影響を大きく受けている作家の一人。ロバート・デ・ニーロとハーヴェィ・カイテルの1973年の『ミーン・ストリート』をワーナーで発表して以来、デ・ニーロ、ジョー・ペシ、レイ・リオッタの1990年の『グッド・フェローズ』などのギャングスター映画のエポックを作り続けている。

 そのルーツは1930年代に撩乱した、エドワード・G・ロビンソンの『犯罪王リコ』(1931年)や、ジェームズ・キャグニーの『民衆の敵』(1931年)、ポール・ムニの『仮面の米国』(1932年)などのギャングスター映画にある。その伝統がヴァイオレンス映画の歴史を紡ぎ、スコセッシが第79回アカデミー賞の監督賞・作品賞に輝いた『ディパーデット』(2006年)もまたワーナー・ブラザースからリリースされたことでも、このスタジオの伝統が息づいていることがわかる。

 歴代興収2位を記録した、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(2008年)は、「バットマン」サーガとしてだけではなく、全編を支配するヒース・レジャー扮するジョーカーの“邪悪さ”が、大衆の心を掴んで社会現象とまでなった。これも突然変異などではなく、非道なギャングたちを描いて、時代のエポックを作ってきたワーナー・ブラザースの伝統を感じることができるのだ。

 またミュージカル映画というジャンルを初めて手がけたのも、ワーナー・ブラザースである。トーキー革命は、1927年、ブロードウェイの人気者アル・ジョルソンの「お楽しみはこれからだ」の名台詞で知られる、初のトーキー『ジャズ・シンガー』で、映画界にサウンド旋風を巻き起こすことになる。初のオールトーキー映画は、ワーナーのミュージカル映画だったのだ。

 さらに1930年代には、“天才”と呼ばれた振付師で演出家のバズビー・バークレイが『42番街』『ゴールド・ディガーズ』『泥酔夢』『フットライト・パレード』などのミュージカル映画で、万華鏡のような映像、セクシーなダンサーの露出、そして美しいサウンドを展開。映画でしか作れない、シネ・ミュージカルの新境地を拓いていくこととなる。

“You Must Remember This: The Warner Bros. Story”は、こうした現在へと連綿と続いていく、ワーナー・ブラザースの歴史をひもといていくだけでなく、アメリカの近代史において、映画が果たした役割を、実にわかりやすく、実に興味深く魅せてくれる。

 エンディング音楽は、ロナルド・レーガン主演の『嵐の青春』(1941年サム・ウッド監督)のテーマ曲“Kings Row Suite”。作曲はエリック・ウォルフガング・コーンゴールド、演奏はワーナー・スタジオ・オーケストラ。これぞワーナー・ブラザースを象徴するゴージャスな名曲である。

 コメンテーターも多彩。ジョージ・クルーニー、マーティン・スコセッシ、クリント・イーストウッドといった大御所はもちろん、アメリカ映画史研究の第一人者である評論家や学者の見識あるコメント、そして、ジェームズ・キャグニー、ウイリアム・ウエルマン監督、ジョン・ヒューストン監督、エリア・カザン監督といった、既に鬼籍に入って久しいキーマンたちの貴重な映像インタビューも適材適所に登場する。エンタテインメントを語るのに、堅苦しい講義など必要ない。膨大なフィルムライブラリーから、美しい画質にリストアされた名作の数々の名場面、スターたちの素顔が垣間見えるプライベート・フィルムや、貴重なメイキング映像などが次々と登場する。こうした映画アンソロジーは、映画ファンにとっては、これ以上ないほど至福の時を提供してくれるのだ。

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