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zoom RSS ピンク・マルティーニ with 由紀さおり in ホリディ・コンサートツアー 12月16日第二部

<<   作成日時 : 2011/12/25 14:08   >>

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ピンク・マルティーニ with 由紀さおり in ホリディ・コンサートツアー
12月16日&17日 ボストン 
バークリー・パフォーマンス・センター 第二部

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休憩時間はおよそ15分、いやもっとあったかもありません。とにかく通路には、観客たちが思い思い、グループで話をしたり、カップルで感想を述べている姿が目立ちます。ぼくも、隣のアメリカ人に話しかけられて、そのフレンドリーな雰囲気は、ステージと観客の一体感をより、暖かいものにしてくれているんだなぁ、という実感がありました。BGMは、おそらくはトーマスがチョイスしたであろう、ミュージカルやスタンダードの名曲の数々が流れています。物販コーナーで、ごっそりとCDを買ってくるお客さん、iPhoneで記念写真を撮っている人など、とにかく賑やかな休憩時間でした。

そして、照明がハーフになると、皆、それぞれの席に戻り始めます。整然というよりは、三々五々、という感じです。

トーマスがピアノに着席、他のメンバーも所定の位置についたところで、ストーム・ラージが登場です。

16. We Three Kings ウイ・スリー・キングス(ストーム・ラージ)

トーマスのピアノのイントロで始まるのは、”Joy to the World“収録のクリスマス・ソング “ We Three Kings”です。日本では「我らはきたりぬ」として知られているクリスマス・キャロルです。ここでもギャビン・ボンディのトランペットをフィーチャーしていますが、マイルス・デイビスを思わせるクールな演奏に、一気に、Pink Martini Worldに引き込まれています。

17. Santa Baby サンタ・ベイビー(ストーム・ラージ)

ストームのMCで紹介される次の曲は、アーサー・キットが1953年に歌って大ヒットとなった“Santa Baby”。バック・コーラスは、ティモシー・ニシモト、ロバート・テイラー、そしてギャビン・ボンディら男性合唱団の面々がつとめます。どことなくユーモラスで、ストームのヴォーカルも、CDのチャイナの味とはまた違うっキュートな味わいです。

18. U Plavu Zoru (ストーム・ラージ)

トーマスがストームの“Santa Baby”を「キュートだね!」と賞讃したところで、次の曲の紹介。ニコラス・クローサーのヴァイオリンとパンシー・チャンのチェロをフィーチャーして、厳かに始まる”U Plavu Zoru”は、いつ聴いてもゾクゾクします。カラフルなクリスマス・ランドから一転、シックで漆黒、クールな世界となります。イントロに静かにストームのコーラスが忍び寄ってくる感じ。次第にヴァイオリンとストームの声が高まったところで、トーマスのピアノが歯切れよくメロディを叩き出し、パーカッションがリズミカルにテンポを刻みます。そこにホーンセクションが官能的に絡んでくる。ギャビン・ボンディのトランペットの高鳴りが、極まったところで、歌が始まります。アルバム “Hang on Little Tomato“の名曲ですが、この曲はライヴが一番。Pink Martiniってどんなグループ? という問いの答えになっているからです。

観客は、もちろん大絶賛。第二部の最初の2曲のクリスマス・ソングで、休憩明けの観客を落ち着かせ、3曲目の”U Plavu Zoru”で、別世界へと誘ってくれます。この構成、選曲のうまさは、トーマスが自分たちのことだけでなく、観客のことも常に考えて、世界を構築していることの証でもあります。

19. Elohai, N’tzor 
(アイダ・レイ・カハナ、ストーム・ラージ、アリ・シャピロ)

トーマスが“Joy to the World”について、そのアルバムに参加してくれたクラシックの名歌手について、観客に話します。ピッツバーグ出身、アメリカを代表する才能、アイダ・レイ・カハナ
http://www.milkenarchive.org/people/view/all/44/Cahana,+Ida+Rae
がNYのコンサートにも参加してくれたことなど。「今日は、そのアイダ・レイ・カハナさんをお招きしています!」と紹介。満場の観客の拍手。アイダ・レイ・カハナが登場し、ボストンの観客に挨拶。ステージのストーム・ラージ、アリ・シャピロと共に、”Joy to the World“収録の”Elohai, N’tzor“を歌います。ヘブライ語のクリスマス・キャロルは、会場を荘厳な雰囲気にしてくれます。CDでチャイナが担当したパートをストームが歌いますが、これがなかなか素敵です。アリ、ストーム、アイダ・レイと、それぞれ音楽ジャンルの違う三人のコーラスによるクリスマス・キャロルは、このコンサートでなくては楽しむ事ができません。

20. Youkali("Youkali: Tango Habanera") (アイダ・レイ・カハナ)

アイダ・レイ・カハナが「次の曲は、クルト・ワイルが作ったものです」と紹介するのは、1935年頃、ドイツ出身の作曲家で「三文オペラ」などで知られる、クルト・ワイルのタンゴの名曲"Youkali: Tango Habanera"です。トーマスのピアノは、まるでアルゼンチンタンゴのバンドネオンのような響き、そしてアイダ・レイの高音がとても気持ちよく、そこにニコラス・クローサーのヴァイオリンの音色が絡んできて、一気に、1930年代の南米に来たような、そんなシックな気分にさせてくれます。アイダ・レイ・カハナをイントロデュースするのに、この曲をセレクトするトーマスの慧眼!

21.Ocho Kandelikas (Eight Little Candles)

続いて、アリ・シャピロのMCで紹介されるのは、”Joy to the World“収録のクリスマス・ソング”Ocho Kandelikas”。15世紀頃、スペインやポルトガルから南米に定住したユダヤ系コミニュティで歌われるハヌカーと呼ばれるユダヤ教の行事の歌。ストーム・ラージとアリ・シャピロのデュエットで、リズミカルに歌われます。これを聴いていると思い出すのは、江利チエミさんの「裏町のお転婆娘」。その原曲“The Naughty Lady of Shady Lane”へのオマージュあふれるアレンジとダンサンブルなサウンドは、1950年代、世界を席巻したラテン・ブームをイメージさせてくれます。

そして、観客が一気に盛り上がったところで、トーマスが再び、由紀さおりさんを呼び込みます。「プリーズ・ウエルカムバック ラブリー、ファンタスティック、サオリ・ユキさん!」

22.夜明けのスキャット(由紀さおり)

由紀さおりさんが、真っ赤なドレスで登場。「ご存知のように、日本は3月11日の大震災で、困難な局面に立たされました。しかし、皆さんの暖かいご支援で、立ち直っていくと確信しております。皆さんのご厚意に感謝します」と英語でスピーチ。会場からは大拍手!

そして、ギターの名手、ダン・ファンレーがイントロを奏で、ゴージャスな演奏による「夜明けのスキャット」が始まります。Pink Martiniのヴァージョンは、この曲の持つムードを見事に拡げて、トーマスのピアノはゴージャスに、いずみたくサウンドを21世紀のものにリ・バースさせてくれます。隣のアメリカ人は、とにかくこの曲の間中、溜息を漏らしていました。歌い終わった時の拍手の厚さ。感激の一瞬でした。

23.真夜中のボサ・ノバ(由紀さおり&ティモシー・ニシモト)

いずみたくに続いて、筒美京平! それが何の違和感もないのが、Pink Martiniのマジック! この時点で、観客にとって、歌の言語に対するこだわりは一切ない、ドイツ語、ポルトガル語、ヘブライ語、そして日本語が、次々に歌われる。その曲にとって最良の言語だから、ということをちゃんと理解出来る、そういう構成なのです。由紀さんも、ティモシーさんのエスコートでリラックスして、この「真夜中のボサ・ノバ」を歌っています。間奏に入る、ダン・ファンレーのギターのうまさ!本当に惚れ惚れします。アレンジに何の手を加えてもいないのに、当代一流のミュージシャンたちが、これだけの演奏をしてくれるのは、やっぱり原曲の持つチカラ、由紀さんの持つチカラです!


24. Get Happy/Happy days are here again
(アリ・シャピロ&ストーム・ラージ)

鳴り止まぬ拍手。由紀さんへの賞讃が続き、トーマスは「次の曲何だっけ?」(笑)そして「1969」のアルバムの話をした後「次は、1963年の、偉大なジュディ・ガーランドとバーブラ・ストライサンドがデュエットしたこの曲です」と、紹介するのは“Get Happy/Happy days are here again”です。これは1963年に、テレビ「ジュディ・ガーランド・ショウ」に、バーブラがゲストに出演した際に披露された奇跡のデュエットの再現です。これにはノックアウトされましたね。”Get Happy“といえばジュディのMGMミュージカル最後となった『サマーストック』(50年)のショウ・ストッパー・ナンバーです。そして50年代にステージで返り咲いて、ミス・ショウビジネスの名を欲しいままにしたジュディが1960年代に出演した冠番組のなかで、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのバーブラと共演。ベテランとニューカマー、二人の実力派シンガーが、それぞれの持ち歌を同時に歌うという趣向でした。それをアリ=ジュディ、ストーム=バーブラで再現しているのです。

満場の拍手のなか、トーマスがメンバーを紹介。最後に、ストームが「ピアノ、トーマス・ローダーデール」とリーダーを称えます。これも気持ちが良いです。拍手、口笛、歓声、観客はアンコールを求めます。そして・・・

25.White Christmas ホワイト・クリスマス(ストーム・ラージ&由紀さおり)

アンコールは、もちろんクリスマス・ソングの定番のこの曲です。ほとんどビング・クロスビーも歌わなかったヴァース部分(これがトーマスのこだわり)から優しく、しかししっかりとした歌声で、アーヴィング・バーリン作詞作曲の名曲を謳い上げます。ダン・ファンレーのギターが、まるで暖炉のような暖かい音色を奏でます。この曲は、ビング・クロスビーとフレッド・アステアがはじめて共演したミュージカル映画『スイング・ホテル』(42年)のなかで披露され、瞬く間にスタンダードとなりました。CD“Joy to the World”同様、英語版をタップリ聴かせてくれたところで、トーマスのピアノによるイントロがはじまり、由紀さおりさんの「ホワイト・クリスマス」となります。

山下達郎さんの訳による日本語歌詞は、実は、CD化の際にアーヴィング・バーリンのサイドが「日本語は・・・」というハードルがあったことを、冒頭でトーマスが話していたことを、ここで再び思い出します。この歌が披露されたのは1942年(昭和17年)のことです。太平洋戦争開戦一年のクリスマスです。アメリカ人にとっても日本人にとっても、その頃を思うと複雑な気持ちがあると思います。だから、今まで日本語歌詞のヴァージョンはなかなかありませんでした。

しかしトーマスは “Joy to the World”で、由紀さんをフィーチャーすることで、70年の時を経て、乗り越えてしまいます。さらにこのアルバムに収録されている、Congratulations – A Happy New Year Songは、1945(昭和20)年の年末、第二次大戦の終結を記念して、中国のソングライター陳歌辛が上海で作った“恭喜恭喜”です。ストームの英語、由紀さんの日本語、そしてティモシーの中国語・・・ 時を超え、国境を越えて、というトーマスがこのアルバムで試みたことは、それぞれの歌の成立に立ち返りつつ、今、世界中が手を組んで、フレンドリーに暮らして行くことの、楽しさ、嬉しさ、喜びを噛み締める、平和主義なのだなぁと、このアンコールを聴きながら、改めて気づきました。


26.Mas que nada マ・シュケ・ナダ(由紀さおり)

そしてアンコールの2曲目は「1969」のなかでも、世界に衝撃をもたらしたMas que nadaの日本語ヴァージョンです。セルジオ・メンデスとブラジル ‘66の大ヒット曲を、1969年にアストラッド・ジルベルドが、日本語で吹き込んだヴァージョンは、LP「ゴールデン・ジャパニーズ・アルバム」(1969年)のために永田文夫さんが訳したものです。ここでもロンドン公演同様、アメリカ人観客が日本語の歌詞にビックリ、そしてそれが喜びとなって、大セレブレーションとなり、観客は総立ちとなりました。由紀さんもノリノリで、最後のカーニバルに向けて、会場のテンションは最高潮に達します。

27.Brazil ブラジル(ストーム・ラージ)

Pink Martiniのコンサートの最後は、やっぱりこの曲です。ミュージカル・ファンにとっては、1943年の20世紀FOX映画『ザ・ギャングス・オール・ヒア』のなかで、ブラジルの爆弾娘・カルメン・ミランダが、ファンタスティックな衣裳(特に頭の飾り!)を身にまとって歌ったラテンの定番です。会場は、まるでリオのサンバカーニバルのように、ヒートアップ。総立ちの観客が、ストームの合図で、隊列をなして、通路を練り歩きながら踊ります。メンバーもマラカスやギロなどを手に、ご機嫌な演奏を続けます。由紀さんもリズムをとり、その場所にいる全員が一体となる感じは、ライヴならでは。そして、演奏終りのトーマスのピアノの締めがまたいい、余韻を残しつつ、ジャジャジャン! と音で幕引きをするのです。

夜8時にスタートして、終演時間はおよそ10時50分近くでした。タップリと25曲、Pink Martiniのサウンドに酔いしれ、由紀さおりさんのアメリカデビューをセレブレーションした観客の皆さんは、その場を立ち去りがたく、その興奮を伝え合っています。

出口に向かう人の足が、これほど遅いのは何故だろう? その疑問はロビーに出ると氷解します。CDやレコードを買ったお客さんに、メンバーがそれぞれサインをしているのです。由紀さんも、アリ・シャピロさんも、ストーム・ラージさんも、そしてトーマス・ローダーデールさんも! このサービス精神! ロンドンでもアメリカでも、それは変わらないのです。アンコールとサイン会、これが、彼らの定番なのです。

終演後1時間半ほど経って、楽屋でトーマスに、今日のコンサートの感想を話すと「明日は、もっと凄いものになるよ」とニッコリと話してくれました。同じホテルだったので、トーマスと話をしながら帰途へつきました。翌日への、さらなる期待に胸を躍らせながら・・・



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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
ポートランドでコーディネーターしておりました山本弥生(短髪)です。現地では、お声掛けが出来ませんでしたことをお詫び申上げます。

佐藤さんの記事を興味深く読ませていただきました。
色々書きたいことは沢山あるのですが、次回に・・・

又、いつの日かポートランドでお会いできますことを楽しみにしております。
弥生
2012/01/19 05:47

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